秋の夜の濃密な深み

Photo by taka (ip11)

だんだん日が短くなってきた。そういえば秋分の日を過ぎたのだから、既に昼よりも夜の方が長くなっているのだ。春分の日に感じる日の出の感じとは逆の、なんというか暮れていく感じがちょっと切ない。

子どもの頃(まだ実家に住んでいた小中学生の頃)の秋から冬に向かっていく季節は、とても好きだった。寒くなるのが嫌だなぁぐらいは思っていたかもしれないけど、それよりもクリスマスやお正月が近づいてくるワクワク感が勝っていたような。それに秋の夜長、本を読んだり音楽を聴いたり電子工作したり、ギター弾いたりラジオ聴いたり、BCLしたりアマチュア無線したり、楽しめることは沢山あった。

あの頃のぼくには、秋から冬にかけての夜の時間には濃密な深みがあり、例えるならば深海の貝になったような気分で、なにかに没頭出来た。そうだ、あんなに集中して楽しむことを楽しんでいた。なんて素晴らしいこと!

もしかすると、あのまま上京などせずに地元で仕事を探し、実家で暮らしていたら、今でもあの濃密な深みを味わっていたのだろうか。いつのまにか母親に捨てられてしまったぼくの玩具も手元に残り、好きなものに囲まれて、もっと自分らしく過ごしていたのではないかと考えたりもする。

ずっと実家にいたら、今頃、何をしていたのだろう、ということは、今までもたまに考えることがあった。そういう選択もあったのだ。上京してからも、2回ほど、Uターンする選択をしそうになった。けれど、その選択はしなかった。だから、今となってはわからない。それに、もしかすると、東日本大震災で津波に飲まれて死んでいたかもしれない。

新たな転生をするとき、ある程度好きな時代を選べると聞いたことがある。もしもリクエストしてもいいのなら、マンモスがいたギャートルズのような時代からまだ見ぬスタートレックのような未来の世界までいろいろ経験してみたいけど、今のぼくは、つい、あの秋の夜の濃密な深みを味わえる実家の少年時代を選んでしまうような気がする。


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