祭りばやしが遠のくように

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Photo by taka (31MR)

祭りのお囃子が、かすかに聞こえたような気がした。
肌寒い秋の夜に、蒸し暑い夜の記憶が蘇る。

ぼくにとっての最後のお祭りは
ずいぶんと昔のような気がする。

そう思って、記憶をたどってみると
実家で過ごした最後の夏のお祭りが浮かんだ。

ぼくは高校から親元を離れたから
中三のときの夏の七夕祭り。

もちろん、その後でも
その時々で住んでいる場所や
旅先などの訪れた土地で
お祭りには出くわすことはあった。

けれど、それは、ぼくにとって
お祭りではなかった。

お祭りでなければ、なんだろう。
人々の季節の集いか。

もちろん、それらのお祭りについて
否定しているわけではない。

それぞれのお祭りは
それぞれのお祭りとして存在していた。

ただ、ぼくにとっての
お祭りの条件を満たしていないというべきか。

ぼくのお祭りの記憶。

寂れた街並みも
そのときばかりは、大変に賑わい
昼間から山車が引かれ、お囃子が響き
日常と違う時空に、戸惑いを感じながら
その日だけは、どんな望みでも
叶いそうな気がした。

夜になると、山車が灯篭のように光り
幽玄で幻想の世界が、無限に広がっていく。

闇とともに山の方から
八百万の神々や妖怪たちがおりて来て
笛を吹いたり太鼓を叩く町の人たちとともに
お祭りに参加しているのだと思った。

露店の灯りと発電機の音。
そこに浮かび上がる浴衣姿の少女たち。

そして見えない存在たちに囲まれて
ぼくの頭の中は
ずっとぼんやりとしたまま
くらくらしていたように思う。

あのとき、ぼくは、
そのお祭りの一部として
存在していたのだろうと思う。

今住んでいるところでも
お祭りはあるようだけど
ぼくは、参加したことがない。

もしも、参加したとしても
お祭りの一部には
なれないんだろうな。

楽しい時間を過ごせたとしても
それはイベントでしかなく
あの幽玄で幻想的な時空を感じることは
出来ないのだ。

実家に戻り、
地元のお祭りに参加したらどうだろう。

それでも、ぼくにとってのお祭りは
もう、そこには、ないのだろうと思う。

けれど、もしかすると、ひとつだけ、
ぼくにとってのお祭りを再開できる方法が
あるような気がする。

それは、ここには書かない。
そして、出来れば、いつか
試してみようと思った。


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