ひと月まえのお誕生日(熊本地震2日前)

ここ『地球LOVE』にずうずうしく間借りさせてもらっているのに、なかなか更新できずにいたので、「よし、お誕生日を機にまた少しずつ書き始めるかな」と思ったそのお誕生日から、ちょうどひと月経ってしまいました。実は、すでに文章を書いていたのですが、仕事が立て込んでいて2日間アップできずにいました。「さて、そろそろアップしなくては」と思っていたその日、大地が大きく大きく揺れました。
それから一か月。たいへん重たいひと月でした。わたし自身も、ハイ状態だったり、沈み込んでしまったり、元気だったり、疲れ果てて動けなかったり、まるで大地にできたうねりのような日々を過ごしました。そして、少しずつ少しずつ日常を取り戻しつつある自分がいる一方で、4月14日のままでいる自分もいます。思いを言葉に綴ることで、自分のなかでバランスがとれていけたらいいなと思っています。
今日は、そのひと月まえにアップするつもりだった文章を。

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お誕生日を機にまた、少しずつ、言葉を綴っていこうかと思っています。
自分の心に浮かぶあれこれを整理するために。
そしてわたしの想いが誰かにいつか届くように。

池田晶子さんが、その著書「暮らしの哲学」のなかで、「言葉」というものについて大変興味深く語っていらっしゃいます。そこはもう思いっきり哲学ですから、ここでわかりやすく要約するにはちょっとエネルギーが必要。だからそれは断念。だけれども、わたしのなかに残しておきたいので、いくつかの彼女の言葉をそのまま引用します。

「世界とは言葉であり、言葉こそが世界を創っている」

「言葉の不思議とは意味の不思議であり、意味とはそれ自体が始源の宇宙なのだ。神の言葉が混沌を秩序化し、世界は世界として成立しているのだ」

「言葉とは『意味』ではなくて『音』なのだ……『意味』より先に、『音』があるのだ」

 

読んでいるうちに、もっと言葉を大切に扱わなくてはという気持ちになります。だって、言葉が世界を創っているのですよ! もともと「言った言葉が真実になる」とか「言霊」とかそういう言葉は常に頭の片隅にはありましたが、これは片隅ではいけないぞと。

最後に「暮らしの哲学」よりもうひとつ引用。

「魔法のことば」

ずっと、ずっと大昔
人と動物がともにこの世に住んでいたとき
なりたいと思えば人が動物になれたし
動物が人にもなれた。
だから時には人だったり、
時には動物だったり、
互いに区別はなかったのだ。
そしてみんながおなじことばをしゃべっていた。
その時のことばは、みな魔法のことばで、
人の頭は、不思議な力をもっていた。
ぐうぜん口をついて出たことばが
不思議な結果を起こすことがあった。
ことばは急に生命(いのち)をもちだし
人が望んだことがほんとにおこった――
したいことを、ただ口に出して言えばよかった。
なぜそんなことができたのか
だれにも説明できなかった。
世界はただ、そういうふうになっていたのだ。
(イヌイットの伝説より)金関寿夫訳