タイムカプセル

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Photo by taka (7D)

去年の夏、一関をぶらぶらしてて
ちょうど、この写真のところを通りかかったとき
とても古い記憶を思い出した。

とても古い、と書いたけれど
つい先日のような気もするぐらい
はっきりと覚えている。

しかし、もう、それは、
30年以上も前のことだ。

高2か高3のときだったと思う。
ぼくたちは、この場所に
タイムカプセルを埋めたのである。

こんな場所に(ここは市役所の裏だ)
こっそり埋めたのだから
深夜だったはずだ。

そういえば、夜遊びが面白くて
仕方ない年頃だった。

そして、タイムカプセルと書いたけど
ジュースの空き缶を埋めたのである。

下宿生活をしていたぼくの部屋には
毎日のように、同級生の友人たちが遊びに来ていた。

今では、考えられないほど
当時のぼくは社交的で
誰か来ることに苦労を感じなかった。

そんな友人たちのなかで
ダントツに出席率が高かったのが
Hくんである。

Hくんは、年中どこかの女の子に
片想いをしている男で
それだけなら問題ないんだけど

自分がどれだけその子を好きで
どうしたら彼女になってもらえるのか
ぼくの部屋に来て
夜通し、話し続けるのであった。

さすがのぼくも
だんだん飽きてきて
生返事しながら欠伸をしてると
まだまだ話し足りない彼は

「ラーメンがなんか食いにいがねが」
(訳:ラーメンでも食べにいこうよ)

と言いながら、食べ物で
ぼくを釣るのだった。

年中、腹ぺこぺこぺこのぼくは
その誘惑を断ることが出来ず
結局、続きを聞かされるのであった。

そんなHくんと
夜中、散歩しているとき
多分、自動販売機で缶ジュースでも買って
飲みながら話していたのだろう。

で、飲み切ったあと
たまたまこの場所にいて
どっちからともなく
土を掘り始めて埋めた。

そして、大人になって
いつか思い出したときに
これを掘りに来よう、ということにしたのだ。

ただ埋めるだけじゃ
ゴミの不法投棄になるので
内心、自分たちの行動に
理由を付けたかっただけ
なのかもしれないけれど

意外にも結構、純粋な気持ちで
想い出を残しておきたいと
考えていた気もする。

まだ熱血な頃だからね。
海に向かって、バカヤローって
言えそうなぐらい(笑)

とはいえ、今、こうして写真を撮りながら
掘り返してみる気は起きなかった。

ブロックのような石垣は
当時のままのように見えるから
或いは、掘れば、それは、
出てくるのかもしれないけれど
ボロボロになっているよね、きっと。

でも、こうして、記憶だけでも
掘り返されて、出てきたのだから
やっぱり、それは、タイムカプセルだったのだ。

Hくんは、秋田の大学に行った後
4年遅れで上京して、ぼくと同業者になった。

それからしばらくの間は
たまに会ったりしていたのだけど
ここ10年以上、疎遠になっている。

風の便りでは、最近、結婚したらしい。
万年片想いのHくん、どんな嫁さんもらったか。

記憶のタイムカプセルを掘り出してしまったからには
連絡して、またラーメンでも食べにいかないとだめだな。

いや、しかし、ちょっとまてよ。
嫁さんに片想いしてたらどうしよう(笑)


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