この季節の雨は、なんだか切ない。

GWの最終日は雨になった。ぼんやりしながら雨の匂いを楽しみたいと思って、窓を開けてみたけれど、少し強めの風が吹いており雨が入って来た。窓際に置いてある機材に水滴がついた様子をみて、これはまずいと、すぐに閉めた。それでも、雨の匂いは部屋に入り込み、ぼくは少しの時間だけど、それを感じることが出来た。

この季節の雨を感じると、ある地方都市の公共施設の駐車場で、人を待っていたときのことを思い出す。まだ震災前のことだから、ずいぶん前のことだ。そのときのぼくはフロントガラスに到達した雨粒が、かたまりになって一直線に走る様子を観ながら、時間を過ごしていた。

ぼくは、その人と会うほんの数十分間のために、7時間、夜通し運転をしてそこにたどり着き、そして出番を待つ芸人のように少し緊張した状態で運転席に座っていた。まもなく始まる時間に備えて、心の準備をしていた。今思えば、あまり役には立たなかった気がするけど。

あのときの雨の匂いは、今の季節の雨の匂いと同じだ。そのことをぼくはとても幸せに感じる。匂いに包まれると、あのときに戻れるから。しかし、同時に切ない気持ちでいっぱいになる。思い通りにならない自分の人生を感じるから、かな。

毎年、この時期、雨の日は、同じように過去に戻っては幸せを感じ、切なさを感じるのだが、幸せと切なさの配分が徐々に変化していることも自覚する。以前は、切ないだけだった。今は、まあ、半々ぐらいかな。だんだん、幸せの比率の方が大きくなっている。悟りのような心持ちだろうか。それとも自分の人生に対する諦めだろうか。そして、いつか、ぼくの寿命が尽きるころ、この比率はどうなっているだろう。

GWの最終日は、さっき終わったところだ。今、5月8日 月曜日 午前0時18分。カーテンを閉めているので外は見えないけれど雨の音が聞こえる。この雨は天気予報によると明日のお昼過ぎまで降り続くようだ。今夜は、雨の音を聴きながら、眠ることにする。


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