RANDY CANDY – 久保田 利伸

ぼくが初めて正社員として就職したのは
渋谷の南口から少し歩いたところにある中堅ソフトハウスだった。

大学を辞めてフリーターをした後
まあ、いろいろやってたんだけど
あんまりいいこともないし
このまま東京で暮らしていても仕方ないような気になっていて
もう、いっそ故郷に帰ろうかなんて考えてた頃である。

反面、故郷になんか帰ってたまるか、
みたいな気持ちも残っていて
求人誌などから、情報処理の仕事なら
なんとか業界に潜り込んで
やっていけそうな感じもしていたのである。

そして、ある日(12月の上旬だった)
渋谷の東急ハンズに買い物に行ったついでに
勢いで面接を受けたら、受かってしまった。

この面接に受かってなかったら
ぼくは、故郷に帰っていたかもしれない。
今思えば、人生の岐路のひとつだったと思う。

渋谷に高層ビルがまだ1つしかない頃である。
(東邦生命ビル、今は渋谷クロスタワーと言うらしい)

入社時は、まったくの未経験だったけれど
入社して1ヶ月で即席プログラマーの出来上がり。

あの頃、仕事というか毎日が楽しくて仕方がなかった。
自分で言うのはなんだけど、あの頃のぼくといったら
知識の吸収がすごいのである。
プログラミングも設計手法もどんどん覚えた。
なんせ、怖いものなし、って感じだった。
(なぜ、今、あのノリが出来ないのだろう)

で、話は飛ぶけど
入社して3年めぐらいに、総務の女子社員に手を出した。

「RANDY CANDY」を聴くとその頃を思い出す。

楽曲のノリがあの頃のぼくのノリにそっくりだ。
怖いもの知らずで、今思えば、自信過剰のバカだ。

そうか、今、あの頃のノリが出来ないのは
今、少しだけバカじゃなくなったからか(笑)

渋谷は、今、どんどん変わっているけれど
あの頃、ずいぶんと庶民的というか下町っぽいところも残っていて
うらぶれた雀荘や、宮下公園の存在感など
結構、好きだった。

新宿に比べたら、渋谷の方が穏やかで品があった。
青山や表参道の雰囲気を熟成させた感じ。

今は、がさがさして得体の知れない場所になってしまった感じ。
まあ、ぼくが年寄りになった、ということだろうけど。