クリスマスの思い出

紅葉
Photo by taka (7D)

クリスマス・イブの朝、仕事に行く途中の電車の中で
ぼくは、遠い過去の記憶を思い出していた。
クリスマスの思い出である。

それは、思い出というには頼りないほどの
ヒトコマしかないような記憶。

ぼんやりと浮かぶのは、クリスマスの夜に
ぼくが、ひとりで、酒を飲み、潰れそうになってる様子。

場所は、下宿先の自分の部屋。
時代は、高2のときだったのだと思う。
(もう時効だから、書いてもいいよね。)

酒は、ウイスキーの小瓶だった。
平べったいタイプのもの。
(ポケット瓶というらしい。)
銘柄は思い出せない。

水割りにして飲んでいたのだろうか。
つまみもなにかあったのかも。
この辺りは、ぜんぜん覚えていない。

友達に録音してもらった
甲斐バンドのカセットテープを聴きながら
とにかく一人で飲んでいたのである。

今は、クリスマスになると
過去の記憶やら人生への躊躇いやら
いろんなものが溢れてきて
切なくて切なくて仕方なかったりするのだけれど
あの頃のぼくは、まだ生まれたばかりで
そんなに切ないことはなかったと思う。

せいぜい、女の子にモテないとか
そういうことを嘆くぐらいなもので
クリスマスに酒を飲んで潰れてしまう理由なんて
これっぽっちもなかったはず。

だから、きっと
背伸びしてたのかな。

飲んで潰れる大人というものを
体験したかったのかも。

または

わけもわからず
未来の自分を想って
嘆きの先取りをしていたのかな。

その真相は、いまのぼくにはわからないけれど。

ただ、あのときに聴いていた甲斐バンドの曲の中で
「最後の夜汽車」が
妙にぼくの心に残っている。

あの頃は、いい歌だな、とちらっと思ったぐらいで
心の片隅に置きざりにして、忘れてしまうぐらいの
そんなもんだったけれど

年齢を重ねるごとに
ぼくの頭の中を
「最後の夜汽車」が流れることが多くなって
今では、大好きな曲のひとつになってしまった。

いつか、カラオケで歌ってやろうと思ってるんだけど
そもそも、カラオケなんて行かないから
まだ、そのたくらみは、実現していない。

クリスマスの夜

古い下宿部屋の片隅で
ウイスキーの小瓶を飲みながら
酔い潰れそうになっていた少年は
今、どこかにいるのだろうか。

たぶん、きっと、おそらく
今でも、ぼくのなかにいる。

ぼくのなかにいて
「最後の夜汽車」を歌いながら
酔い潰れそうになりながら
未来を想っている。


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