「A-ray」

「A-ray」1997年7月16日発売

亜波根綾乃さんのファーストアルバムである。ダビングされたカセットテープに入っていたのが、このアルバムの楽曲だった。まだ1枚目だと言うのに完成度が高い。彼女の活動した時期は短かったけれど、決して中途半端に姿を消したわけではなく、当時の彼女が表現出来るすべてをちゃんと残していったのだ、とも思える。

彼女を紹介してくれた人が「綾乃さんの歌は、どれもイマジネーションが広がって素敵なんですよ。」と教えてくれた。そのとき、亜波根綾乃という歌手の存在すら知らなかったぼくは、それがどういうことなのかわからなかったのだけれど、今、誰かに紹介するとしたら、「イマジネーションが広がって素敵なんですよ。」って言うと思う(笑)

ところで、A-rayとは、どういう意味なのであろうか。暗闇に射したひとすじの光かな。アルバム全体の完成度だけで捉えるとひとすじどころか、光溢れる感じなのだけど、彼女の作詞作曲でもある最後の曲「Crystal」まで聴き通すと、そこにひとすじの光をもとめる綾乃さんの姿が見えてくる。そこまでわかると綾乃さんの深さに圧倒されてしまいそうになる。また歌ってほしいな、と切に願ってしまう。

1. Prologue (ひこうき雲の空の下)

波の音から始まるプロローグ。イメージとしては、浜辺で車を停めて海を眺めて、ラジオを付けてダイヤルを回すと、どこかの局にチューニングが合った途端「ひこうき雲の空の下」が聞こえ、ふと空を見上げると、眩しい青空を白い軌跡を描きながら飛行機が飛んで行った、というような情景が浮かぶ。季節は夏のイメージだけれど、海の家で波の音を聴きながらラーメンを食べていたら「ひこうき雲の空の下」が流れていた、というイメージにはならないのは、飛行機の音が効果的だからかな、といらぬことを考えたり。

2. がんばれ 私!

シングル2枚目。はじけた炭酸のような爽快感で始まる。なんという溢れる透明感。10代の少女が、未来に向けて走り出すイメージ。歯を食いしばって前に進もうとするとき、この曲を思い出して口ずさんだら元気になりそうな応援歌的な曲。ZARDの「負けないで」とペアで使うと相乗効果が出て怖いものなし。

3. Seventeen

シングル3枚目のカップリング。「がんばれ 私!」に比べると落ち着いた曲想、昔のフォークソングのような懐かしさも。「夢だけ食べても生きていけるさと信じ合ってた♪」という歌詞が印象的。17歳ぐらいの頃、純粋に恋だけを求めて生きていた頃を思い出す。あの頃は、好きな女の子と一緒なら不可能なものはない、と思っていた。(逆に、好きな女の子がいなければ世界は終わりだ、とも思っていた(笑))そんなことを思い出しながら歌詞をかみしめるようにして聴いていると、当時のぼくの直向きさを思い出して、うかつにも泣いてしまうときがある。泣ける歌ではないんだけどね。歳をとると涙腺が弱くなっていけない。

4. First Friend

イントロは少し遅い春の日のぽかぽかした土曜日の昼下がりの放課後のようなイメージ(超個人的な感覚だけど)。雰囲気の良い落ち着いたアレンジ。少し大人っぽい。主人公の少女が、野球部で補欠選手の幼馴染みの彼と恋をしながら、ちょっとだけ大人になるストーリー。背番号が真っ白の少年が、がむしゃらに真夏のグランドを走る情景が浮かんでくるようだ。隠れた名曲だと思う。First Loveでなくて、First Friendとしたところが爽やか。

5. 大きな風

デビューシングル。かわいいピアノのイントロで始まるゆったりとした楽曲。でもスケールは大きい。美しい海のような壮大な広がりを表現したアレンジは、安心して身を任せたくなるほど心地好い。アルバム全体に見え隠れする飛行機雲も登場する。今、何かの映画のテーマソングに使ったら、大ヒットするのではないだろうか。なんとも癒されるのである。登場が早過ぎた気がする。歌詞が素晴らしいと思うのでリンクしておく。UTA-NET 大きな風 良かったら読んでみてください。特に、ちょっと片想いをしているあなたなら。もっとも、この曲に限らず、彼女の歌う詩はどれも良いのだけれど。

6. My Home Town

故郷を離れた少女が久し振りに帰省したイメージなのだろうか。そこには夏の海、惜しみなく降り注ぐ大量の光、そして切なさで溢れそうな心を抱えた少女が、故郷の駅の前に立っている姿が見える。キラキラしてとても眩しい。少し大人になった少女が回想の続きを現実につなげていくような。市営グランドが出てくるので、もしかするとFirst Friendの少女の数年後の形なのかな。(全然、違ってたらごめんなさい。)

7. 愛はきっと

デビューシングルのカップリング。レゲエとヒップホップとカントリーが融合した感じ(あくまでもぼくの感覚)。今までのアレンジとはがらっと変わって人生の哲学を歌う感じ。

8. 弟ではいたくない

スローな語るようなアレンジ。そのせいか印象的には薄いかも。友達のお姉さんに恋をするストーリー。綾乃さんの楽曲で、男の子目線は珍しい。歌詞を辿ると、自分の少年時代に重なる部分も。男の子には誰でも、心に秘めた憧れのお姉さんがいるもんです。ちなみにぼくの場合は、好きになった2つ上の女性が、実は、同じクラスの友達のお姉さんという展開だった。

9. るり色の夢~forget-me-not~

この曲を好きな方は多いのではないだろうか。夢見心地になるようなアレンジ。切ない回想の詩。何かの感情が溢れて止まらないとき、ふとどこからかこの曲が流れて来たら、間違いなく泣く、ほら、今もなんかうるうるしてきた(笑)テーマは違うのだろうけれど、倉木麻衣さんの「Time after time ~花舞う街で~」を思い出すようないにしえの魂を感じるのは、桜が散る4月の恋の詩だからかな。どちらも手をつなぐんだよね。ああ、手をつなぎたい。(ああ、手をつなぎたい、時空を超えて何度も再会しているキミと。なんて、どさくさに紛れて(笑))

10. 自己紹介

シングル2枚目のカップリング。前曲から一転してリズミカルな展開のイントロ。アイドル系の試みをしてみた感じ。良い曲なのだけど、他の曲が良すぎて小ネタっぽく感じる。実際、こういうノリは2枚目以降ではない。

11. あなたに会いに行こう

おどけたイントロが楽しい。ああ、これから夏休みが始まるぞーって気分になる。しかも、高3の夏休みだな。学生時代のノーテンキと苦悩が混じったカオスな日々を思い出す(それはとてもいい気分という意味で)。いつもこんな気持ちで生きたい。こんな恋をしていたいと思うような曲。

12. ひこうき雲の空の下(Album Version)

シングル3枚目。感動的なコンサートのフィナーレを飾れるような楽曲。はっきり言って泣けてきます。安っぽくなく媚びてもいなく、ありのままの姿勢で、ただただ心のままにシンプルに、透明な水だけで丁寧にこしらえたような名品。このような曲が埋もれて人知れず埋もれていくのは本当にもったいないと思う。16歳の少女がこのような普遍の宇宙に通じるような壮大な作品を、自分のモノにしてしっかりと歌いあげたことにも驚き。

13. Crystal

シングル4枚目のカップリング。亜波根綾乃さん自身の作詞作曲。「ひこうき雲の空の下」がフィナーレなら、この曲はアンコール。クリスタルで出来たオルゴールで鳴らしたような美しいイントロが印象的。このアルバムの中では一番好きかもしれない。このアルバム以降、亜波根綾乃さんが創った歌は一発で好きになる。ぼくの場合、何度も聴いてやっと好きになる歌が多い中、これはすごいことだ。えーと、一目惚れってやつですか。